幽霊姫は止まれない!
 こういうことは早ければ早いほど有利に働く。もちろん入念な準備が大事であることはわかっているが、こちらが準備をしている間は敵国も準備をしているものだ。それならば敵国の準備が整う前に攻撃をしかけるのが最も効率的である。
 
 一国の王である父ならば当然そんなこと気付いているだろうが、ここは王太子としてあえて言葉にし提案すべきかと再び私が口を開いた時、そんな私の声を遮るように先に父が話し出した。
「まず隣国を敵国と呼ぶな。エヴァが自ら行く国と戦争を起こす気か?」
「なッ! ま、まさかエヴァが嫁ぐことを了承したというのでしょうか!? あり得ない、あの子はまだ十九、三年前に成人したばかりの生まれたての子供です!」
「成人して三年もたっている相手は生まれたての子供とは呼ばんがな。まぁ気持ちはわかる。それにエヴァは嫁に行くわけではない、今回の婚約申込は当然だが断る」
「ならば何故エヴァが敵こ……隣国へ?」
 まさかエヴァ本人が直々に出向き断りを入れねばならないほどの相手からの求婚だというのだろうか、と思わず首を傾げた私に、再びゴホンと咳払いした父が説明をしてくれた。
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