幽霊姫は止まれない!
 しかもエヴァ本人もそれを許容している。あの心優しい妹は他人を拒絶するだなんて考えがないのだろう。だが、自分に惚れた男に全幅の信頼を預け、警戒を完全にといては危険だ。男というのはいつ狼に変貌してもおかしくないのである。
 それにエヴァにデレデレしっぱなしの男なんてまさしく妖精姫といっても過言ではない妹には釣り合わない。もっとキリッとし、そして常に紳士的で能力も高くなくては。
「その点近衛騎士はいいな」
 オスキャルには戦闘能力こそ及ばないが、オスキャルより賢い男ならばいるだろう。人間というのは武力のみでできている訳ではないのだ。
 そしてオスキャルより顔のいい男もいる。
 あと、近衛騎士ならば全て私の管轄だ、エヴァを守るという点で私以上の適任もいない。

 そこまで考え、隣国へ向かわせる近衛騎士は若手の実力者かつ顔のいい男を中心に選定した。
「突然のライバル出現に慌てるがいい……!」
 くふふ、と笑いながら選定した書類を自身の側近に手渡す。ちなみに「私が近衛騎士に混ざるのはどうだろうか」という提案はその側近から秒速で却下された。
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