幽霊姫は止まれない!
「実は、彼に幽霊姫のことを『妖精姫』って教えたの。美しい女性に目がないミックだもの、妖精姫と聞いて即婚約を申し込んでくれたわ。友好国の公爵令息、しかも嫡男よ。幽霊姫にとっても悪い話じゃないでしょう?」
 そう言ってイェッタがにこりと笑う。そして楽しそうに更に口を開いた。
「王女がミックと結婚したら私も親戚としてオスキャル様とお近づきになれるかもしれないし、ソードマスターは居住も所属も変えられないもの。専属護衛騎士も解任になるだろうし、全てにおいて最高だわ!」
 うふふ、と楽しそうな彼女とは対照に、私は告げられた内容にまるで後頭部を殴られたかのような衝撃を受ける。

「ど、どうしてっ!」
 自分で調べるためにわざわざこんなにまどろっこしい方法を取って探りにきたのに、あっさりと答えを教えられたショックで私は愕然としてしまったのだ。

 思い切り声を荒げた私を見て、ビクリと肩を震わせたイェッタはすぐに焦ったように両手を顔の前で振る。
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