幽霊姫は止まれない!
 体の弱かった幼い私を過保護に育てた父。母を奪ってしまったも同然なのに、母に一度も抱きしめて貰えないことが可哀そうだと代わる代わる抱きしめにきてくれた兄とふたりの姉。
 憎んでもおかしくないのに愛情をみんなから与えられた私は、自分が選ぶことなく全てを与えられてきた。何も言わなくても全て揃い、わがままに育った自覚もある。

「俺がエヴァ様の唯一……! エヴァ様が嫉妬……! エッ、アッ、エッ!?」
「そうよ。オスキャル以外に護衛騎士いないんだから。というかソードマスターをホイホイ護衛になんて、いくら王族でもできることじゃないんだからね」
 そんな私が、自身の人生で唯一選んだのがオスキャルなのだ。
(まぁ、そんなことわざわざ説明しないけど)

「あー、剣であり盾としてですよねー。知ってましたー」
「?」
 何故か途端にやさぐれた表情になるオスキャル。そんな彼に思わず首を傾げつつも、私はキュポンとインク瓶の蓋を開けた。

「ま、なんでもいいか」
「なんでもいいとか言われた……これだから自分の興味以外に興味のない人は!」
 キャンキャンと騒ぐオスキャルを無視し、私は用意した便箋へと視線を落とす。
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