幽霊姫は止まれない!
 キーキーと喚くイェッタを軽く流し、彼女の隣に立っているミック公爵令息へと向き直った私がにこりと他所向きの笑顔を作る。

「本日はお招きありがとう、ミック公爵令息」
「あはは。可愛らしいお嬢さんからのお願いならば当然叶えなくてはね」
 そうなのだ。本日のメインイベント、イェッタとの決闘の開催場所は、なんとハッケルト公爵家なのである。
(ま、そうなると思っていたけどね)

 私もイェッタもこの国の人間ではない。そんな私たちが私闘のために用意できる場所なんて限られているだろう。もちろん王族だと明かして今回の合同訓練で使っている訓練場を借りることはできるだろうが、そうすると騎士たちの訓練場所をひとつ奪ってしまうことになる。
 ただでさえ我が国の要請で訓練場をひとつ借り受けているのだ。流石にこんな個人的な張り合い、それも自国同士のやり取りで頼むのは気が引けたのだ。

 その結果、イェッタの親戚であり、この国の貴族であるミック公爵令息に頼み場所を借りることになったのである。
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