幽霊姫は止まれない!

第二十七話 隠す気は、あるんです

「何やってるのよ、バレるでしょ」
「いや、その発言の方がバレそうですけど。というか俺、座りたくないんですが」
「何でよ」
「マナーに自信がなくて」
 困り顔でそう耳打ちされて、ぽかんとする。
(オスキャルって伯爵家出身よね?)
 伯爵家ならば基本的なマナーは教えているはず。確かに神殿のような神々しい場所や、格式高そうな場所での食事は緊張するかもしれないがここはあくまでも公爵家の東屋だ。

 伯爵家からすれば当然格上の貴族ではあるものの、食事を拒否するほどマナーに手厳しくないだろう。
 そこまで考えた私はやっとある当たり前の事実に気付く。
 彼はソードマスター、何年もかけて訓練し、能力を習得した特別な騎士。
 マナーを学ぶことを後回しにし、剣術や魔力操作の訓練にあてたのかもしれない。その可能性は十分にある。

 彼が自身の時間と青春を犠牲にし努力した結果、モテる要素は一応揃っているにも関わらず恋人どころか親しい令嬢ひとりいない、拗らせた彼が出来上がったのだ。

(その事は西の魔女・ローザの時に散々実感したことなのに、私ってばうっかりしていたわ)
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