幽霊姫は止まれない!
『顔がバレてないから大丈夫よ』なんて言い張ってそのままの姿で今回の潜入をしているのだ。
(まぁ、だから王太子殿下がこんなにも近衛騎士を同行させたんだろうけど)

 ソードマスターが専属の護衛としてついているのにも関わらずのこの護衛数。
 それだけ彼女を大事にしていると実感させられる。もちろんそれは俺も同じだ。
 わがままで奔放。誰よりも図々しく振舞う姿は、誰よりも傲慢だけれど、それは幼い時や自身の生い立ちからくる虚勢の一種だと誰もが知っていた。
 彼女はそんな自分でいないといけないとどこか考えている節がある。
(そんなエヴァ様を、俺は誰よりも特別に感じているから)
 だから。

 だからミック公爵令息に何を言われても関係ない。何を犠牲にしても必ず彼女を守り彼女の邪魔はさせないのだと、机の下でぎゅっと両手を握りしめる。
 どんなことを言われても絶対にポーカーフェイスを保ち、何の情報も渡さない。完璧な仮面を被るのだ、とそう気合を入れ彼からの言葉を待っていた俺に告げられたのは。

「君、妖精姫にフラれたんだね?」
「まだフラれてませんけどぉっ!?」
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