幽霊姫は止まれない!
 鏡で自身の姿を見たオスキャルは、一瞬完全にフリーズしたかと思ったら、一歩、また一歩と鏡へと近づく。段々と速度を上げながら一心不乱に鏡へ向かう彼の姿はどこか取りつかれたかのような異様さを漂わせた。そして鏡に触れたオスキャルは、何故かそのまま鏡の埋まった壁へと頬擦りし始め、私を呆然とさせる。

「オ、ス……キャル?」
「あぁ、あぁ、会いたかった、なんて素晴らしいんだ」
「あらあら、まぁまぁ。面白いことになったわね」
「ど、どういうこと? オスキャルに何が起こったの!?」

 うっとりと鏡を見つめ続けるオスキャルに戦々恐々としながらローザへと詰め寄ると、相変わらずクスクスと笑みを溢しながら私の方へと視線を向けた。

「説明は最後まで聞きなさい。私の秘薬は『恋の秘薬』よ。恋愛の願いなら何でも叶える奇跡の薬。どれだけ望みのない相手だったとしても、この薬を使えば誰もが貴女に夢中になる――」
「夢中に、なる?」
「――そう。つまりは、惚れ薬ね」
「惚れ薬!?」

 ローザの説明を聞き愕然としながら視線を再びオスキャルへと向ける。相変わらず彼がうっとりと鏡に擦り寄っていた。
< 19 / 570 >

この作品をシェア

pagetop