幽霊姫は止まれない!
「っ」
 緊張した面持ちのオスキャルが息を呑む。護衛としてではなく招待客として来たからこその緊張があるのだろう。
 そんな彼の腕を優しくポンと叩くと、ハッとしたような彼と目が合った。

「大丈夫よ」
 そしてにこりと微笑む。艶やかに、華やかに。私がここにいるのだと、そう印象付け安心させるように。
 だって、リンディ国の〝エーヴァファリン〟が貴方の隣にいるのだから。
「私がいるわ」
「──、はい。エヴァ様」

 私たちの様子を放心するように眺めていた侍従へと視線を向けると、少し慌てた様子で扉を開いてくれる。

 さぁ、イェッタ。
 勝負よ。

(私が選び、彼が受けたの。そんな私たちが、紡いできたこの時間と絆が。私の想いが、負けるはずなんてないんだから)

 カツン、と存在を示すように小さく音を響かせて、私たちはホールへと足を踏み入れたのだった。

 ◇◇◇

 ホールへと登場した途端、辺りがシンと静まり返る。
 注目を一斉に浴びたことで一瞬オスキャルがピクリと体を強張らせたが、そんな彼に少しだけ体重をかけ見上げると、すぐに彼の表情が緩んだ。
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