幽霊姫は止まれない!
 そしてどこか諦めたように微笑みながら言われた言葉に愕然とした。

「俺が、踏む方です」
「全力で回避しなさい、というかオーラなんて纏ってないわよね? オーラを纏ったソードマスターに足を踏まれたら私みたいなか弱く可憐な乙女は折れちゃうからね!? 骨!」
 必死に首を振るが、彼の視線はチラチラと足元へ向けられており、これはダメそうである。
(そういえばマナーに自信ないって言ってたものね!?)

 ひえぇ、と冷や汗を滲ませた私も足元へと視線を向けるが、正直彼の恐々ステップをどう回避すればいいかわからない。
 まさかダンスにこんな落とし穴があるだなんて、と青ざめていると、どこか悟りを開いたようだったオスキャルが急にパっと目を見開いた。

「エヴァ様」
「え、な、何?」
「俺いいことを思いつきました」
「私は今悪い予感に襲われているんだけ……ひゃぁあ!?」

 そして言うが早いか、私の腰をきゅっと抱えたオスキャルが高く掲げその場でくるりと回転する。
 その瞬間、周りからは「きゃあ」と黄色い悲鳴があがった。

「これなら踏みませんよっ」
「あはっ、も、もうっ」
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