幽霊姫は止まれない!
 そんな完全にグロッキー状態の私へ、どこから現れたのかミック公爵令息がスッと冷たい水を手渡してくれた。
 ちなみにオスキャルは必死に私の背中を撫でている。

「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう」
 差し出された水をありがたく受け取りコクリと一口嚥下すると、冷たい水がひんやりと心地よかった。

 冷たい水のお陰で少し落ち着いてきた私がふと顔をあげると、少し離れたところでこそこそとしているイェッタと目が合うが、合った瞬間慌てたように顔を逸らされる。
 その様子を見た私は、すぐにオスキャルの方を見上げた。

「私はもう大丈夫よ。それよりオスキャル、イェッタとダンスを踊ってきなさい」
「えっ」
「私みたいに無理やりくるくる回るんじゃないわよ、足だけは踏まないようにすれば、まぁ一応はステップも合ってたから自信もちなさい」
「ですが俺は!」
「命令よ」
 私の言葉を聞き、不満気に眉をひそめるオスキャル。だが、私がその命令を撤回しないと察したのか、はぁと大きくため息を吐いた。

「姫君のことなら大丈夫さ。ボクがついているからね」
「今もっと不安になりましたけど」
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