幽霊姫は止まれない!
「え? いや、私はその」
「毎日熱心に差し入れしたかいあったじゃない」
(ただどの具が好きなのか知りたかっただけで彼自身が目当てってわけじゃないのに)
 まるで私が彼を目当てに通っていたみたいに言われ、不服に思うが実際のところある意味では事実なので何も言えない。

 でもどうしてか、悪い気はしなかった。

 それからはたまごサンドを頻繁に差し入れた。
 同じものばかりだと彼が飽きてしまうかもしれないので、パンを固いものにしたり、香ばしく焼いてから挟んだり。
 ハーブを卵に混ぜてサンドを作って貰ったりと、同じたまごサンドでも色んな種類を作って持って行った。

 そしてわかったのは、彼がどうやらたまごサンドならなんでも好きだということだ。
 卵が好きなのではないようで、他のたまご料理にはあまりいい反応は返さないくせに、それがただパンに挟んであるというだけで彼を笑顔にした。
 そのことがなんだか面白く、嬉しそうにたまごサンドを食べる彼を見ることが私の楽しみになっていた。

 最初は名前も知らなかったが、必要ないと言っているのに友人たちが勝手に彼の情報を持って来てくれた。
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