幽霊姫は止まれない!
 幽霊姫の護衛騎士なのであって幽霊姫の婚約者ではない。だから、我が家から婚約の打診を入れることだって可能だったけれど、彼の笑顔を見た時からきっと断られるのだと察してしまった。
 そしてそれと同時に胸の奥でくすぶる感情に気付いてしまった。

 私は思っているよりもずっとずっと、彼が好きで、それを自覚した時にはもうこの恋の終りを思い知らされていたから──

「それでも、おめでとうございます」

 伝えられなかったその祝いの言葉はただ宙へと消えた。
 それは彼がソードマスターという、誰もが憧れる力を手に入れたことに対してか、それとも彼が自然と笑える相手の側にいれるからなのかは私にもわからなかったのだった。
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