幽霊姫は止まれない!
 だが、そんなボクの推測を軽く首を左右に振って否定したイェッタがにんまりと笑った。

「逆よ。あまりにも美しい末姫に変な虫がつかないようにわざと反対の噂を流したの。だから部屋に閉じこもっているはずの彼女の護衛に、国に十人ほどしかいないソードマスターが選ばれたのよ」
 そう告げられまるで体に雷が落ちたかのような衝撃を覚えた。

(だからこそ実態は『妖精姫』ということなのか!)

 確かにイェッタの言った話は筋が通っている。
 深窓の姫である彼女がいるのはもっとも安全であるべき王城だ。それなのに護衛がソードマスターだなんて、何かあると言っているようなもの。
 もし彼女が冷遇されているならばそもそも護衛なんてつけられないはずなのに、専属護衛がソードマスターだなんて前代未聞だ。
 つまりそれだけ美しく、儚い妖精ということなのだろう。

「変な虫から守るために、とはいえ、このまま一生彼女を閉じ込めることって幸せなことなのかしら」
「それは……確かにそうかもしれないね」
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