幽霊姫は止まれない!
 心配そうにため息を吐くイェッタに同意する。守るためとはいえソードマスターまでつけ王城から一歩も出ないなんて、そんなの蛹のまま生涯を終えた蝶みたいではないか。
 軽い軟禁状態の妖精姫を思い、ボクの艶やかな心がツキリと痛んだ。

「でも、隣国ならどうかしら」
「?」
「それも公爵家。家柄も十分だし、友好国同士の絆もより確固たるものになるわ。それにミックなら、そんな妖精姫に相応しいと思うの」
「確かに、ボクも美には心得があるからね……!」
 イェッタの言葉にさっきよりも激しく同意したボクは、すぐさまペンを手に取った。

「すぐに求婚状を書こう! 愛しのボクの妖精姫。さぁ、同じく妖精のようなボクと楽園を飛ぼうではないか!」
「いいわね、ちょっと怪しいけど家柄が釣り合っていることには間違いないわ!」
 そうしてボクは妖精姫への求婚状をパッションが溢れるまま書き上げたのだった。

 ──が。
「流石、妖精姫。ハードルが高いね」
 返ってきたのはやんわりとした言葉で紡がれるお断りの手紙だった。
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