幽霊姫は止まれない!
 まっすぐに想い合う彼女たちに、互いだけを特別に見つめるその視線に。いつか、ボクもそんな〝運命〟のような相手と共に過ごせたら。
 もしかしたら、妖精姫に会った瞬間に運命を感じるかもしれないけれど。

(でも、彼女を救いたいとか釣り合うとか、そんな感情じゃなくただただ想いあえたなら)
 身分なんて関係ないと思えるくらいの誰かと出会えたのなら。

 ついそんなことを思わされてしまったのだ。
 だがボクは公爵家を継ぐ者だ。平民の彼女は選べないし、そして彼女もボクは選ばないという確信がある。それと同時に、もし彼女がボクを選ぶ可能性が残っていたらボクはどう判断したのだろうと自分の気持ちに苦笑した。

(貴族だから選ばない、なんて。まさかボクが負け惜しみを口にすることになるとはね)
 
「ボクも唯一と言い切れる相手と出会えたら。きっと、すごく素晴らしい日になるのだろうね」


 そんな彼らの正体をボクが知り、エヴァリンと名乗った彼女に揺らされた心を閉じ込め運命のふたりを祝福するまで、あともう少し──
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