幽霊姫は止まれない!
 叶うなら、貴族たちから『幽霊姫』だなんて呼ばれている私を邪険にしない相手がいいとは思うが──
(そこはまぁ、お兄様が判断なさるわ)

 正直どんなに令嬢からのアプローチを受けてもにこやかに流し、特定の相手を作ってこなかったお兄様が、私が隣国で遊んで──ではなく公務をこなしてくるこの短い期間に結婚相手を決めたということには僅かに興味をそそられるが、だがお兄様もニ十七。この年齢でまだ婚約者がいないのは確かに遅いのも事実であった。
 だからこそ誰が相手だろうと、お兄様が決めた令嬢ならもちろん受け入れるつもりである。

「じゃあ、ビアンカ姉様、ブランカ姉様。私長旅で疲れてるからもう部屋に戻るわ。おやすみなさい」
「「待ちなさいエヴァ! 気にならないの!?」」
「えぇ? 気にはならないわ。だって誰であろうと私は受け入れるしかできないもの。それにお兄様を信じているし、きっと素敵なご令嬢だと思……」
「「相手が『預言者』だとしても!?」」
「気になるわ!」
「あぁあ……」
 私と姉様方との会話には頑なに入ってこなかったオスキャルの嘆きのような呻き声が背後から聞こえた気がしたが、それどころではない。
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