幽霊姫は止まれない!
「顔を知られていない貴女たちが適任なの」
「えっ、俺たちで、ですか!?」
 告げられた言葉に私よりも早く反応したオスキャルは、私の顔を見て高速で首を左右に振っている。

「ソードマスターのオスキャルならエヴァを守れるでしょう」
「むしろオスキャルが守れないならどこに行っても守れないな」
「隣国からも無事に帰ってきたしな」
「えぇ。……貞操も、無事よね?」
 話しながら若干声色を低くした姉様たちがジロリとオスキャルへ視線を向けると、さっきまで高速で左右に振っていた首を今度は上下に、相変わらず高速で振っていた。
(首傷めないかしら)

「もちろんよ。一緒に寝ても当然私は無事よ」
「「一緒に寝ても!?」」
「えぇ、実際──」
「それくらい安全な男だということです! 殿下!」
 表情を驚愕に染めて目を見開いた姉様たちへ、私の言葉を遮るようにそう叫んだオスキャル。
 その顔色が青を通り越して土気色になっているのを見て流石に可哀相になった私は、これ以上何も言わないことにした。
(ま、ふたりだけの秘密ってのも悪くないしね)

「でも、とにかくわかったわ」
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