幽霊姫は止まれない!
「それから、もしオスキャルの言った成果がお姉様たちからの依頼の件だったなら、なくはないわよ?」
 ふふん、と不敵な笑みを溢した私に、オスキャルが今度はぽかんとした。

 ──そう。成果はあった。

 そのまま〝ヴァル〟として貰った手紙の束に視線を向ける。

「だってこの手紙たちは、十分すぎるくらい私が〝ヴァル〟として名前と顔を売った成果だもの」
「ヴァルとしての名前と、顔を?」
「えぇ。つまり今のこの姿の私たちは、どこへ行っても『王太子の護衛騎士のヴァル』だと思わない?」
「確かに」
 私の説明を聞いたオスキャルが感心したように頷いた。

 幽霊姫として、『知らない令嬢」ではなく。ヴァルとして『誰だか知っている騎士』という立場は出入りできる場所が格段に増えるのだ。
 それは、例え聖女の近くであろうとも『いて構わない』大義名分が与えられたも同然だった。
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