幽霊姫は止まれない!
「私たちふたりにひとりの吸血鬼をつけてくださればいい。もちろん料金は二倍、いや無理を言っているのだから三倍はらおう」

 そう提案すると、困ったような顔をしていた店員の表情が確かに獲物を見るような目になった。
(いや、この人の方がよっぽど吸血鬼っぽいんだけど!)
 その表情にじわりと冷や汗をかくが、目的のためにもここで推し負けるわけにはいかない。
 じっと睨み合うような時間に耐え、笑顔を必死に作る。

 だがそんな居心地の悪い時間が唐突に終わった。

「……こちらの吸血鬼に、決して無理をさせないというお約束をいただけるのなら」
(やった!)

 相手のその提案に何度もコクコクと頷くと、またも入店した時に見せたようなにこやかな笑顔へ戻ったその店員が、今度は冊子を持ってくる。
 どうやらそれは、ここで働いている娼婦たちの似顔絵集のようだった。

「ここから選べばいいのか?」
「はい。もしくはご要望を教えていただけましたらこちらでお好みの者を提案させていただきますが」
「いや、自分たちで選ぶよ」
 そう言って似顔絵集をパラパラと捲る。
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