幽霊姫は止まれない!
 真っ白で手のひらサイズの染まりキノコだが、なんと木の上の方にあるのだ。正確にはキノコではなく木に寄生している動物らしいのだが、詳しいことは図解書を見てもよくわからない。わかるのは、木を登って採らなくてはいけないということである。

「過酷なところにあるのね……」
 思わずため息を吐いてしまう。ひとつめの材料から早々に断念したくなるが、それでもオスキャルのためなのだから仕方ない。
(それに、あの時私が飲もうとさえしていなければ、オスキャルも飲まなかったはずだもの)
 フンス、と気合いを入れた私がとりあえず木の幹に足をかける。幸いだったのが、木の上の方にあるとはいえ幹に近いところにキノコが生っていることだった。つまりあそこまで登りさえすれば採れる。
 こちとら最年少ソードマスターを相手取り何度も脱走を試みた女なのだ、木登りをしたことはないとはいえお転婆と体力には少々自信がある。懸念点としてはオスキャル相手に一度も脱走が成功しなかった点だが、相手が相手なのでこの場合は誤差だろう。
< 32 / 570 >

この作品をシェア

pagetop