幽霊姫は止まれない!

第五十六話 余裕はきっとふたりだけだから

(護衛騎士は今日も三人ね)
 サッと彼らの方に視線を向けて確認し、オスキャルと目配せをしてそれぞれ歩き出す。護衛についている近衛騎士たちは私たちの正体を知っているので、待ち伏せしていても突然近付いても止めたりはしないが、今日の会話を聞かれるのはマズイのだ。
 何故なら彼らが知った情報は全て兄まで筒抜けになってしまうから、である。

 チラッとオスキャルの方へと視線を向けると、かなり嫌そうながらも頷き、護衛騎士たちと聖女の間を割るようにオスキャルが立ちふさがると、私も歩く速度を上げて彼女の手をそっと取る。

「少しだけ、俺に攫われていただけますか?」
 聖女の手の甲に格好つけて口づけを落とした私は、そのまま驚くみんなを尻目に彼女の手を引いたままその場から離れる。突然の私の行動に護衛騎士たちは焦ったような顔をするが、ソードマスターのオスキャルを押しのけて追うことはできないようだった。
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