幽霊姫は止まれない!
 廊下から少し庭園を進み建物の角を曲がったすぐそば、実際先ほどの廊下からはそう離れてはおらず、この角から顔を出せば渡り廊下は丸見えというか、一分もたたずに戻れる程度の距離だったりする。オスキャルなら、魔力を使いぶっちゃけ一歩で合流できるだろう。
 
(私の護衛であるオスキャルから離れすぎたら、オスキャルまで職務放棄させちゃうことになるものね)
 ついでにいくらソードマスター相手だったとしても私にみすみす護衛対象を連れ去られたとなれば彼らも兄から罰を受けるかもしれないので、実際は護衛できる範囲での距離くらいしか離れないという約束をオスキャルとしたからなのだが。

 それでも建物の角を曲がったことで彼らの視界からは消えたことで、今頃三人は焦っているだろう。
 オスキャルが遅れを取るとは思わないが、あえて時間をかける必要もない。私は早々に彼女の方に向き直った。

 突然連れ去られた彼女だが、驚いた様子もなく平然としている。
 一瞬その余裕は預言でこの未来を知っていたからか、なんて思ったが、預言の聖女というものは嘘だという判断をした自分を信じ、彼女の前でまるで騎士が姫にするように跪いた。
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