幽霊姫は止まれない!
 結婚すれば国の危機から助かる。それは『国を救う』ということではなく、預言を受けた王太子だけが助かるというならば、それこそまだ疑心的だったクーデターの説が濃厚になるというものだ。

「まずその男性が何者なのかを調べなくてはなりませんね」
 オスキャルの言葉に聖女も頷く。その様子を見るに、どうやら彼女も男性ということしかわかっていないのだろう。
 だが、そんなふたりを見て私はすぐさま顔を左右に振った。

「いいえ。まずは西の森へ行くわ」
「西の森、ですか?」
「孤児院のある方とは反対の方角みたいだけど」
 私の言葉に首を傾げたふたりへと、私はニッと口角を上げる。

「魔女に会いに行くわよ!」

 ◇◇◇

「……うっ、ま、まさかまたここへ来ることになるとは」
「ちょっと。姫様の騎士が頭を抱えて膝から崩れ落ちたけど、なんなのよ?」
「過去の恋を思い出してるんだと思うわ」
「過去の黒歴史に絶望してるんですッ!」
「はぁ……?」
 西の魔女・ローザに会うために訪れた西の森。
 相変わらず美しい彼女の邸宅を前にオスキャルが崩れ落ちると、その理由がわからず引いた顔をする聖女。
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