幽霊姫は止まれない!
私の言葉に渋々従うオスキャルに小さく苦笑する。納得がいかないとどこか不満そうに自身の膝の上で拳を握る彼は、護衛としては百点満点だ。そんな彼の左手に、私は感謝が伝わるようこっそり自身の手を重ねる。小さくピクリと反応したので、おそらく伝わったはず。
「ブライトって花なんだけど、知っているかしら」
「確か、見た目は可愛い花をつける一輪咲きの花よね?」
ローザが告げた名前は、この国でも有名な花だった。細い一本の茎に、まるで妖精のドレスのようなふんわりとした黄色い花びらをつける一輪咲きの花である。高さは五十センチほどで、ぱっと見はコスモスのような、でも花びらだけはパンジーのような見た目のとても可憐な見た目をしているのだが、その花の花粉には神経麻痺を起こす毒があり、大量に吸い込むと呼吸器麻痺からの昏睡、そしていずれ死に至るというかなり危険な毒草のひとつだった。
見た目が可憐だからこそ子供たちがうっかり摘んでしまったりする事故が多発し、そして何よりこの花自身の生命力が強くどんな土地にも根を張り、繁殖してしまう。そこがこの花の厄介なところでもあり、しかも根っこからしっかりと駆除しなければまた生え、そしてすぐに増えるので、対処するにはその一体を焼き払うしかないのである。
毒を散布する花畑、なんて恐ろしい場所がすぐできてしまうので、通報があれば速やかに対処する、というのが鉄則だった。その毒草が、まさか材料に使われているなんて。
「ちょ、ちょっと、待ってよ! 私毒なんて持ち込んでないわ!」
そんな私たちとは対照に動揺し完全に立ち上がったのは聖女だ。
「それに私、ちょっと飲んで確かめたのよ!?」
「ローザ、毒って本当なの?」
もちろん少し飲んで確かめたというのは聖女の自己申告。その言葉を証明するものは何もないが、私は彼女が嘘を吐いているとはどうしても思えずそう口にした。そんな私にローザが訝し気な表情を向ける。
「えぇ。……とは言っても材料が、ね。この薬自体には毒はないわ」
その言葉に聖女が誰よりほっとした顔をした。
「材料が、毒?」
「そうよ、毒草が原材料ね。でもその毒の部分を上手く中和させるように配合されているみたい」
「詳しいわね」
「ブライトって花なんだけど、知っているかしら」
「確か、見た目は可愛い花をつける一輪咲きの花よね?」
ローザが告げた名前は、この国でも有名な花だった。細い一本の茎に、まるで妖精のドレスのようなふんわりとした黄色い花びらをつける一輪咲きの花である。高さは五十センチほどで、ぱっと見はコスモスのような、でも花びらだけはパンジーのような見た目のとても可憐な見た目をしているのだが、その花の花粉には神経麻痺を起こす毒があり、大量に吸い込むと呼吸器麻痺からの昏睡、そしていずれ死に至るというかなり危険な毒草のひとつだった。
見た目が可憐だからこそ子供たちがうっかり摘んでしまったりする事故が多発し、そして何よりこの花自身の生命力が強くどんな土地にも根を張り、繁殖してしまう。そこがこの花の厄介なところでもあり、しかも根っこからしっかりと駆除しなければまた生え、そしてすぐに増えるので、対処するにはその一体を焼き払うしかないのである。
毒を散布する花畑、なんて恐ろしい場所がすぐできてしまうので、通報があれば速やかに対処する、というのが鉄則だった。その毒草が、まさか材料に使われているなんて。
「ちょ、ちょっと、待ってよ! 私毒なんて持ち込んでないわ!」
そんな私たちとは対照に動揺し完全に立ち上がったのは聖女だ。
「それに私、ちょっと飲んで確かめたのよ!?」
「ローザ、毒って本当なの?」
もちろん少し飲んで確かめたというのは聖女の自己申告。その言葉を証明するものは何もないが、私は彼女が嘘を吐いているとはどうしても思えずそう口にした。そんな私にローザが訝し気な表情を向ける。
「えぇ。……とは言っても材料が、ね。この薬自体には毒はないわ」
その言葉に聖女が誰よりほっとした顔をした。
「材料が、毒?」
「そうよ、毒草が原材料ね。でもその毒の部分を上手く中和させるように配合されているみたい」
「詳しいわね」