幽霊姫は止まれない!
「でもこの薬は違うわ。魔力の質が根本的に人間と違うわね」
「根本的に?」
「えぇ。これは人間が作ったものではないわ」
 ローザのその説明に私たちは思わず顔を見合わせる。

「せ、聖女は違うわよ。偽物だもの」
「うふふ。もちろん魔女も違うわよ、そして聖女も違うのはわかっているわ。だってどっちも〝人間〟だもの」
「……まさか、エルフ、ですか?」
 その含みを持たせた言い方に、オスキャルがポツリとそんな言葉を溢す。

 ──エルフ。
 エルフとは人間と異なる長寿の種族であり、森に生き、精霊と交わる生まれついての異種族だという。『愛を唄う』という伝承があるほど愛情深いとされるのは、長寿ゆえに見守る時間が長いからという説があるほどだ。
 一方、「魔女」とは種族ではなく、強い魔力を持った人間を指す呼称にすぎない。人間はあくまで人間でしかないのである。

(そして人間ではないエルフなら、特殊な魔力を有して毒を薬に変えてもおかしくないわ……!)

「でもエルフやドワーフってのは伝説の存在じゃないっ」
 ローザの言葉に衝撃を受けたのか、聖女が思わず後退るように机の上に置かれた薬から距離を取る。
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