幽霊姫は止まれない!
第七十二話 残された宝物
私の言葉を聞き、少しポカンとしたエルフと目が合う。
(体調はまだ大丈夫そうね)
そして自分の体調を確認し、異変がないことを確認してから立ち上がる。
「だが、私は彼女の最期の瞬間には立ち会えなかった」
「私を、その場所に連れてってくれるかしら。もちろん無理にとは言わないけれど」
断られる可能性も考えたが、それでも最期を過ごした部屋で彼女の手を合わせたいと思ったのだ。
そんな私の気持ちが通じたのか、私が差し出した手を取ることなく立ち上がったエルフが無言で部屋の奥へと歩き出す。
(ついていっていいのかしら)
少し疑問に思いつつ彼のあとを追うと、部屋の奥に扉がある。その扉の先は寝室だったようで、温かみのある木枠の窓の前には小さな丸テーブルとロッキングチェアが一脚置かれている。テーブルの上には針が刺さったままの刺繍枠が置かれていた。刺繍の図案集だろうか? 本も何冊か置かれている。
きっとあの椅子に座り刺繍をしながら彼の帰りを待っているというのが夫婦の日常だったのだろう。
まるで今も彼女がそこにいるような温度感が残されていた。
(体調はまだ大丈夫そうね)
そして自分の体調を確認し、異変がないことを確認してから立ち上がる。
「だが、私は彼女の最期の瞬間には立ち会えなかった」
「私を、その場所に連れてってくれるかしら。もちろん無理にとは言わないけれど」
断られる可能性も考えたが、それでも最期を過ごした部屋で彼女の手を合わせたいと思ったのだ。
そんな私の気持ちが通じたのか、私が差し出した手を取ることなく立ち上がったエルフが無言で部屋の奥へと歩き出す。
(ついていっていいのかしら)
少し疑問に思いつつ彼のあとを追うと、部屋の奥に扉がある。その扉の先は寝室だったようで、温かみのある木枠の窓の前には小さな丸テーブルとロッキングチェアが一脚置かれている。テーブルの上には針が刺さったままの刺繍枠が置かれていた。刺繍の図案集だろうか? 本も何冊か置かれている。
きっとあの椅子に座り刺繍をしながら彼の帰りを待っているというのが夫婦の日常だったのだろう。
まるで今も彼女がそこにいるような温度感が残されていた。