幽霊姫は止まれない!
 カサリと開いたその手紙へ視線を落としていたと思ったら、彼の目からぽろぽろと涙が溢れ出した。
 その様子をただ見つめていると、二枚目へいくことなく私へ手渡され、戸惑ってしまう。

「えっと……」
「すまない、これ以上自分で読めそうにない。申し訳ないが読んではくれないか?」
「えぇ。わかったわ」
 切実な声色に思わず頷き、少し戸惑いながら彼から手紙を受け取った。
 手紙が三枚にも渡っていたが、一枚目が既に彼の涙で滲み一部読めなくなっている。

 きっと涙でこれ以上読めなくなることを懸念したのだろう。
 この手紙は、彼にとって何よりも大切な軌跡になるから。

 なるべく落ち着いた声色になるよう意識し、受け取った手紙を音読し始める。
 一番上に書かれていたのは、エルフの名前なのだろう。

「『……アルフォード、いつもありがとう。
 貴方をはじめて見つけた時、その美しさにこれが動く彫刻だ、なんて勘違いして驚きから石を投げたこと、ごめんなさい。
 あの時のことは今でもたまに思い出すけれど、私にとっては出会えた大切な思い出よ。貴方にとっては恐怖の思い出かもしれないけれどね。
< 416 / 570 >

この作品をシェア

pagetop