幽霊姫は止まれない!
 そりゃそうだ。恋している相手と離れ離れになるかもしれない、その恋した想いが消えてしまうかもしれない。そんな薬を自らの手で準備しようとしているのだ、辛くないはずはない。
 これは魔女の秘薬の効果で、解毒薬を飲み元に戻った方がいい――なんて私の考えは、本当に正解なのだろうか。それこそ私のエゴなのではないかという不安が過る。だって彼は、今こんなにも苦しそうなのだ。
「……やめても、いいのよ」
「は?」
「オスキャルがどうしてもって言うなら、解毒薬の材料集めはやめてもいいわ。いつか貴方が飲みたいときに改めて作ってもいいんだし」
 ローザがここにいる限り、入手しようと思えば解毒薬はいつでも手に入るだろう。オスキャルの気持ちを薬で作り出したのだと考えれば酷いことだが、ローザが言っていたように悪いことばかりではない。自分を何より好きだということは、自分の命を大事にすることにも繋がり、生存率も上がるからだ。
「私は私の都合で解毒薬を欲しいと思ったの。でもそれはオスキャルの気持ちを踏みにじってまでではないわ」
「ッ、ですが!」
「だから無理しなくてもいいって言ってるの」
 ――ドシン
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