幽霊姫は止まれない!
「無理とかじゃなくて、俺は、俺が言いたいのは」
「大好きな自分を忘れる必要なんてないもの、貴方の一番は貴方であるのはいいことだし」
「全然いいことじゃないですよ! 俺は、俺が本当に優先したいのはっ、命がけで守りたいのはっ」
 ――ドシン、ドシン……
「いいえ、オスキャルは仕事だからって私のために命まで投げ出す必要はない。貴方は貴方を最優先して」
 ――ドシン、ドシン、ドシン
「って、何!? うるさい……わ、ね?」
 ぎゃいぎゃいと騒いでいたからだろうか。遠くから何かの音がしていることは気付いていたし、どんどん聞こえる間隔が狭まっていることにも気付いていた。けれどオスキャルとの話に夢中になっていたせいで後回しにしていた私は、流石に無視出来ない近さになってから音の方を見上げ、呆然としながら口を間抜けにもポカンと開ける。
 見上げた視線の先には、水に濡れた石のように濃いグレーの巨大な塊がそこにいたのだ。上部には指で開けたような小さな穴が開いており、おそらくそれが目なのだろう。
「ゴーレム!?」
「お下がりください!」
「待って!」
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