幽霊姫は止まれない!
 赤子からは、私に対する恋情のフェロモンが漏れていたが、気付かないフリをしていた。だって相手は赤子なのだ。私に対する想いなど父親へ感じるものと同等だろう。

 そんなことを考えていたある日、赤子が別れの挨拶だと私の家を訪れた。
 あまりにも突然の出来事で、言っていることがわからなかった。

 どうやら赤子が暮らしている孤児院は、十八になったら出て行かないといけないのだという。私にとって十八なんてやはり赤子だが、それでも泣きながら別れを告げるその姿に胸の奥がツキリと痛んだのはなぜだったのか。
 どかで住み込みで働ける場所を探すのだと言った赤子は、泣きながら私を好きだといった。

 知っていた。
 だってエルフは、相手の好意がフェロモンの匂いでわかるから。

 だがその時まで知らなかった。
 寿命の短い人間の十八歳は、もう働き一人で生計をたてることのできる大人だということを。

「なら、私の家に住み込みはどうだ言ったせいで」
 どうしてそんなことを行ってしまったのかはわからない。だが、離れるのが嫌だと思った瞬間私はそう口にしていたのだ。
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