幽霊姫は止まれない!
 即答するオスキャルの表情は、最後の材料を手に入れて解毒薬を作りたくないというようなものではなく、純粋に私を心配するものだった。そして純粋に私を心配してくれるからこそ、その彼の中を占めているのが彼自身だという事実に胸が苦しくなる。
(だってオスキャルには、オスキャルが本当に愛した人と幸せになって欲しい。私の、分も)

 いくら幽霊姫とはいえ、私はこのリンディ国の王女なのだ。いつか政略結婚をするだろう。その未来は変わらない。
 この国の誰かとするのかもしれないし、どこか別の国へと嫁ぐかもしれない。それがいつかもわからないが、その時が来ればその相手を愛し従わなくてはならないのだ。好きな人と結ばれるようなことは起こらない。
 だからだろうか。この状況を作り出したのは自分だというのに、ずっと彼を振り回しているのは自分だとわかっているのに、それでも彼には『薬で作られた想いじゃなく本当に愛する人』を見つけて欲しかった。
(さっきは解毒薬作り、やめてもいいだなんて言ったくせにね)
 自分の気持ちが不確かで、矛盾した考えばかりが浮かんで消える。
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