幽霊姫は止まれない!
 それなのに彼女が選んだのは俺だけ。

(俺が、唯一の護衛ってことなのか?)

 まさか彼女も約束を覚えていてくれたということなのだろうか。
 もちろん違うかもしれない。それでも、俺の心を震わせるには十分な言葉だ。

「大丈夫よ、お兄様。私はあまりお外には出ないもの。基本王城の私室で過ごしているのだから、たくさんの護衛は不要だわ。だって王城は、お兄様も所属していらっしゃる近衛騎士団もいるものねっ」
 先ほどまでの凛とした姿とは打って変わり、ふふ、と笑う彼女はまるで花が綻ぶようである。

「それに彼はソードマスター。そんな人を選んだのだから、更にもっと、なんて言えば批判が出てしまうわ……」
「うぅむ……」
「でも私は彼がいいの。だからお願い、三人なんて言わないわ。ね?」

 そしてそんな彼女の言葉に納得したのか、小さくため息を吐いた王太子殿下は俺の方へと向き直った。

「ソードマスターである君ならば問題はないと思うが、エヴァが出掛けたいと言った時には付き添ってやって欲しい」
「はい」
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