幽霊姫は止まれない!
 そもそも、未来がないとわかっているのに告げる意味がない。
 むしろ足枷にしかならないだろう。
 
「俺はあと少しの間だけ、側にいられれば──」
「いやいや。だからこそ、だろう?」
 まだ言うか、とつい半眼になった俺に、今度はどこか熱意を込めたアルフォードがズンズンと近付き慄いてしまう。

 そしてその端正で中性的な顔をグイッと近付けたアルフォードは、愛を唄うと言われるだけあるエルフとして、俺の手をぎゅっと握りながら瞳を煌めかせた。

「あと少ししかいられないなら、その少しを恋人としてより密接に過ごすべきだ」
「こ……っ!?」
「お前たちは互いに想い合っている。ならば当然だろう! 彼女だって、好きじゃない相手に嫁ぐ前に好いている相手と過ごしたいに決まっている!」
「そ、そう、か……?」

 本当にそうなのだろうか。
 でも流石愛を唄うエルフ。その勢いもさることながら言葉にも説得力があった。
< 476 / 570 >

この作品をシェア

pagetop