幽霊姫は止まれない!
「性格も、難がないとは言わないが人格者であることは間違いないな。それに誰より王族という責務を考えているタイプだ。恋愛相手ってなると少し揉めるかもしれないが、だが必ず相手への敬意を忘れないと断言できる」
「王族の責務……」
 それは私が最も果たしたいと思っている、ある意味夢のような考え。その考えを優先しているだなんて、正直私の理想そのままだった。

(恋愛相手じゃなくてもいい、国を最も優先し最善を選べる人ってこと?)
 しかも敬意を忘れない、と兄が断言する相手。そんな好条件の人が、婚約者もいないだなんて!

「で、ですが、それほどまでの好条件のお相手ならば、私ではなくお姉様方の方がよろしいのでは……」
 二十四歳ならばまさに双子の姉と同い年だ。私ではなく、よほど姉たちの方が優れているのだから当然そう思ったのだが、兄はゆっくり顔を左右に振る。

「ビアンカとブランカがあまりいい顔をしない」
「え?」
「相手は、オルコットの第一王子、サイラスだ」
「サイラス、様?」
 それは良く聞く名前だった。とは言っても面識があるわけではなく、単純に兄の友人の名前だったからだ。
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