幽霊姫は止まれない!
 ──最年少ソードマスター。そんな彼を専属の護衛にし、何年も拘束していたのも事実。私の護衛だった時間、オスキャルはパーティーというパーティーに出ていない。伯爵令息である、彼は仕事があるから、と一度も出ていないのだから、そう思われても仕方ない。
 別に専属がオスキャルだけだからといって、ずっと私の側にいなくてはいけないわけではないし、用事があれば一時的に護衛の任を近衛騎士などに任せても問題はなかったけれど。

(私がすぐに脱走を試みるから)
 それを懸念したのか、オスキャルはどの誘いも断っていた。それを知っていて、私もあえて行かせようとはしなかった。

 決して無理やり縛っていたわけではなかったけれど、彼が行かないことを望んだのは事実だったからだ。

 私が何も言わないからか、彼女たちの視線が更に刺さる。オスキャルに憧れている令嬢は、少なくない。イェッタだって、そうだった。
 彼女は真正面から挑んできたから払ったけれど、今オスキャルと私は護衛と主という関係すらもなくなり、何も主張することはできない。もう、反論する権利も持っていないことが、胸を締め付ける。
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