幽霊姫は止まれない!
 だがそのどちらを選んでも、結局は私とサイラスの間に割り込むのは不可能だ。近くには来れても、全員と踊っている間にダンスを終える私たちとはまた物理的な距離ができてしまうから。

 悔しそうな声をあげる兄をクスクスと楽しそうに眺めながら進むサイラスにも少し呆れてしまう。だが、同性の親しい友人同士ならばこんなものなのかもしれない。
(でも、私もなんだかんだでブラコンなのよね)
 普段見ない兄の姿は悪くないが、玩具にされている兄の姿が少しだけ可哀相にも見えた私は、敵討ちとまではいかないが、少しだけ意趣返しのつもりでサイラスの耳元へわざと顔を近付けた。

「サイラス様こそ、幽霊姫なんかと踊ると余り物を押し付けられたと噂になってしまいますわよ?」
「何故?」
「え? な、何故って」

 まさか質問で返ってくるだなんて思っておらず、不思議そうな顔をするサイラスに戸惑ってしまう。
 自分から振った話題だったのに返答に戸惑い、私が口ごもっている間にホールの真ん中へもたどり着いた。そしてなんとなく気まずいまま、ダンスが始まってしまう。

(こんなつもりじゃなかったのに)
< 526 / 570 >

この作品をシェア

pagetop