幽霊姫は止まれない!

幕間・六 サイラス・オルコットはいい性格をしていた

 サイラス・オルコット。オルコットの第一王子。年齢は二十四歳、性格良好――これは多分。
 幼い妹がいるからか面倒見がいい方、というのは彼の自称だが、〝いい性格〟であるのは間違いなかった。

 外交が盛んで、立地の関係もあり国際貿易の中心地となったことで、急速に発展し豊かさはこの大陸一と言っても過言でないほど。
 そんな彼にまだ婚約者がいないのは、単純に人気がありすぎたからだった。

(そろそろ婚約者を決めないといけないってことはわかっているが)
 はぁ、とため息交じりに眺めるのは令嬢たちの情報が一覧になった書類である。
 俺の結婚が遅れているせいで気を揉んだ側近がわざわざ作ってくれたものだが、そのあまりの多さに辟易としてすぐに伏せた。

「いや、すげぇ見やすいんだけど……」
 爵位だけでなく国別の情報、しかも家族や交友関係もまとめられているので膨大な量である。それだけ心配してくれているというのはありがたいのだが、どうしてもまだ結婚に一歩踏み込めないのは、年上の友人だってまだ婚約者すらいないからというのも大きかった。
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