幽霊姫は止まれない!

幕間・一 オスキャルの日常(前編)

 俺の朝は、リンディ国の末姫ことエーヴァファリン・リンディ第三王女の護衛騎士として、彼女の私室の扉の前に控えるところからはじまる。
 本来の護衛騎士の仕事は、主君が扉から出てきたタイミングから邪魔にならないよう気配を殺して外ならば前方、王城内や何かしらのパーティー、会議室内などでは後方にお仕えしお守りすることである。間違っても主君の私室、それも寝室などに足を踏み入れることなどあってはならないが、緊急事態とみなされる状況の時のみ入ることが許可されていた。
 緊急事態とは例えば刺客の侵入が確認された時、部屋の中の主君の様子に異変を感じ取った時、そして。
「くそっ、今日もだな!?」
 主君の脱走に気付いた時、である。

 バンッと乱雑に開いた部屋の中には案の定誰もおらず、二階のバルコニーへ出る扉が開いている。
「今日は窓からか! あーもう、二階だから脱出できるんだ、いっそ三階とか四階に――配置されても脱走を試みそうだな……」
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