幽霊姫は止まれない!
「おー、そうきたかソードマスター。一応言っとくけど、同意ない駆け落ちはただの人さらいだからな?」
「わっ、わかってますよ! だから攫うって決めたって自己申告したでしょ!?」
 完全に面白がっているサイラスの目には涙が浮かんでいる。ぷるぷる震えながら呼吸も苦しそうなところを見ると、完全にオモチャとして楽しんでいるようだ。ここが誰も見られない部屋の中とかならば、転げまわって笑っているかもしれない。

(一瞬私のことを想って涙を浮かべてくれたのかと思ったけど、どう見てもそれだけはなさそうね)
 その事実にホッとし、残念に思えなかったということに自分自身少しがっかりした。

 やはりお互い、最初から交わる相手ではなかたのだろう。

 笑いすぎて苦しそうなサイラスとは反対に、オスキャルも僅かに震えている。

(この震えは、不安だからよね)
 サイラスの言った『ただの人さらい』が思ったよりも効いているようだった。

 ――本当に、バカ。
(だって、私が選ぶのはいつも……)
 頼るのも、頼りたくなるのも、そして心を守りたいのも預けたいのも、全部全部、オスキャルだけだから。
< 618 / 624 >

この作品をシェア

pagetop