幽霊姫は止まれない!
 にこにことしながら俺が腕に抱えたバスケットを覗き込もうとするエヴァ様から顔を背けつつ、内容は聞いていません、と素っ気なく答える。激しく鼓動が鳴っているが、表に出すわけにはいかない。けど、彼女が目の前をぴょこぴょこと動く度にどうしてか花の香りがふわりと鼻をくすぐり、全く落ち着かない――が、それももちろん表に出すなんて出来るわけないので全力で押し隠した。

 離れの裏にある小さな東屋までやってくると、嬉しそうに座ったエヴァ様の前にバスケットを置く。今日の軽食は残念ながらエヴァ様の希望のビスケットではなかったが、新鮮な野菜と彼女が食べたいと言っていた生ハムも入ったサンドイッチだった。ビスケットでなかったが、そのことに駄々を捏ねるなんてせず早速ひとつ取り出しすぐにかぶりつく。
「まだ準備中ですが」
「いいから早くオスキャルも食べなさい。こういうのはかぶりついてナンボなの」
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