幽霊姫は止まれない!
「この、『妖精姫』ってなんでしょうか?」
手紙の文章の至る所に、幽霊姫ではなく〝妖精姫〟と書かれていたのである。
不思議に思い何度も宛名と見比べてみるが、そこにはちゃんと私の名前が記載されており、しかし本文には幽霊姫ではなく妖精姫。ぶっちゃけ妖精なんて呼ばれたことなどない。
けれど父は、怪訝な顔になっているだろう私に真顔で答えた。
「エヴァのことだろう。エヴァは私の可愛い妖精さんだからな」
――訂正。いたわ、私を妖精と呼ぶ人間。父。
「私も私が両親や兄、姉たちに似てとても、とーっても可愛いのは自覚しておりますが、この家門の紋章に心当たりがありません。体調を崩しがちでなかなか公務を行えない私です、それなのに一体どこで私を妖精だと判断したのでしょう? 噂で聞いたというのならば、妖精ではなく幽霊と書いていたはずだと思うのですが……」
しゅん、と俯きながら精一杯全力で弱々しく振舞うと、すぐに父が心配して立ち上がろうとする。そんな父を大丈夫だと笑って制止した。この演技をやりすぎて医師を呼ばれたら面倒だからだ。
手紙の文章の至る所に、幽霊姫ではなく〝妖精姫〟と書かれていたのである。
不思議に思い何度も宛名と見比べてみるが、そこにはちゃんと私の名前が記載されており、しかし本文には幽霊姫ではなく妖精姫。ぶっちゃけ妖精なんて呼ばれたことなどない。
けれど父は、怪訝な顔になっているだろう私に真顔で答えた。
「エヴァのことだろう。エヴァは私の可愛い妖精さんだからな」
――訂正。いたわ、私を妖精と呼ぶ人間。父。
「私も私が両親や兄、姉たちに似てとても、とーっても可愛いのは自覚しておりますが、この家門の紋章に心当たりがありません。体調を崩しがちでなかなか公務を行えない私です、それなのに一体どこで私を妖精だと判断したのでしょう? 噂で聞いたというのならば、妖精ではなく幽霊と書いていたはずだと思うのですが……」
しゅん、と俯きながら精一杯全力で弱々しく振舞うと、すぐに父が心配して立ち上がろうとする。そんな父を大丈夫だと笑って制止した。この演技をやりすぎて医師を呼ばれたら面倒だからだ。