幽霊姫は止まれない!
 相手が何を思って幽霊姫の私に婚約を申し込んだのかも気になるし、どこをどう間違って幽霊姫が妖精姫になったのかも気になる。私のことが隣国全体で妖精姫と話題なのか、それともこの婚約を申し込んで来た彼だけが私を妖精姫だと思い込んでいるのか、そのあたりもついでに調べたい。だがもし私がエーヴァファリン本人として隣国へ行けば、王族として出迎えられ王族としての行動を求められるだろう。そうなれば自由に動けず、私の〝気になる〟が解消されないかもしれない。
(だから絶対王族としては行きたくないわ!)

 私のそんな本心をどう解釈したのか「エヴァが自分の力で国の役に立とうと……!」なんて涙を滲ませた父が指先で涙を拭いながら大きく頷いた。

「わかった。エヴァの望むようにしよう。だが絶対オスキャルの側から離れないようにな」
「シャァッ!」
「エヴァ?」
「あ、いいえ、その……はい、もちろんです。お父様、ありがとうございます」
 にこりと笑みを作った私は、うっかりボロが出ないうちに、と慌てて立ち上がりお辞儀をする。そしてそのままそそくさと父の執務室から退散した。
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