幽霊姫は止まれない!
「でも、令嬢たちが自身の恋人の姿を見に訓練場へ行くことは多いと本で読んだわよ?」
「それ、自国内の話ですよね。あと、令嬢自らが来る場合ですよね。今回俺は仕事で行く他国に、俺の意思で、恋人を連れてくるような公私混同野郎に成り下がったわけですが」
「あら。ラブラブなのね、仕方ないわ」
「演技のくせに!」
 いじけたように口をすぼめてそう呟いたオスキャルが、そのままガクリと項垂れる。
「絶対他に方法がありましたって……」
「大丈夫よ、これは演技。ただの演技」
「ウゥッ」
「この本当になんでもないただの演技は、隣国でだけだから。自国では変な噂は流れないから安心してね。この間のドレスの時だって結局噂にはならなかったじゃない。私と貴方はただの護衛対象とその護衛ってだけの間柄よ。それが公然の事実だからね」
「くっ、トドメか?」
「は?」
 そんなオスキャルに、効果があるかは不明だが私は精一杯励ましたのだった。
< 93 / 570 >

この作品をシェア

pagetop