無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
ときおりふたりの横を通り過ぎる足音が聞こえてくるが、気にせずやり過ごす。
静かに降り続く雪と大きな傘が、幸せで頰が緩んでいるに違いないふたりの顔を上手に隠してくれているから。
ふたりがカフェに帰ってきた時、雪はすっかりやんで明るい陽射しが注ぎ始めていた。
美月は受け取った花束をバックヤードに置くと、いつもの黒いエプロンを身に着け店に顔を出した。
年末で忙しいのか、普段顔を見せる常連さんたちの姿はなく、観光客らしい顔ぶれが席を埋めている。
今日でカフェも仕事納め。閉店後には今日を最後にアルバイトを辞めるふたりの送別会を盛大に行う予定だ。
「遅くなりました」
ちょうどカウンターでコーヒーを淹れていた岡崎に、美月はそっと声をかける。
「お疲れ様。本当なら今日は休みなのに、雪の中行ってもらって悪かったな」
「いえ、全然。送別会の準備までには来るつもりだったので、平気です」
平気どころか碧人とふたりの時間を楽しめて、申し訳ないくらいだ。
「そういえば、桜井さんは? ああ、有坂の旦那さん……じゃなかったな」
岡崎はふっと笑い、小さく首を振る。
「つい有坂って言ってしまうんだよな。俺もいい加減あきらめ……いや、慣れないとな。有坂じゃなくて、桜井、だよな。桜井……桜井」
コーヒーを淹れる手元をじっと見つめながら、岡崎はまるで自分に言い聞かせるように繰り返す。
「別に有坂でもいいですよ。私もまだ慣れてなくて、書類とか有坂って書いちゃうことも多いんです。そのうち慣れると思います」
それは名字を変更した人あるあるで、次第にしっくりくるはずだ。
「慣れる……そうだな。そのうち慣れるよな。有坂じゃなくて桜井って名前に」
「岡崎さん?」
ふと黙り込んだ岡崎に、美月は首をかしげ声をかける。
静かに降り続く雪と大きな傘が、幸せで頰が緩んでいるに違いないふたりの顔を上手に隠してくれているから。
ふたりがカフェに帰ってきた時、雪はすっかりやんで明るい陽射しが注ぎ始めていた。
美月は受け取った花束をバックヤードに置くと、いつもの黒いエプロンを身に着け店に顔を出した。
年末で忙しいのか、普段顔を見せる常連さんたちの姿はなく、観光客らしい顔ぶれが席を埋めている。
今日でカフェも仕事納め。閉店後には今日を最後にアルバイトを辞めるふたりの送別会を盛大に行う予定だ。
「遅くなりました」
ちょうどカウンターでコーヒーを淹れていた岡崎に、美月はそっと声をかける。
「お疲れ様。本当なら今日は休みなのに、雪の中行ってもらって悪かったな」
「いえ、全然。送別会の準備までには来るつもりだったので、平気です」
平気どころか碧人とふたりの時間を楽しめて、申し訳ないくらいだ。
「そういえば、桜井さんは? ああ、有坂の旦那さん……じゃなかったな」
岡崎はふっと笑い、小さく首を振る。
「つい有坂って言ってしまうんだよな。俺もいい加減あきらめ……いや、慣れないとな。有坂じゃなくて、桜井、だよな。桜井……桜井」
コーヒーを淹れる手元をじっと見つめながら、岡崎はまるで自分に言い聞かせるように繰り返す。
「別に有坂でもいいですよ。私もまだ慣れてなくて、書類とか有坂って書いちゃうことも多いんです。そのうち慣れると思います」
それは名字を変更した人あるあるで、次第にしっくりくるはずだ。
「慣れる……そうだな。そのうち慣れるよな。有坂じゃなくて桜井って名前に」
「岡崎さん?」
ふと黙り込んだ岡崎に、美月は首をかしげ声をかける。