無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「ああ、なんでもない。ただ上司としては、早く慣れておかないとな。それより旦那さんはどうしたんだ? 一緒に行ったんだよな?」

「そうなんです」

いつもと変わらない岡崎の優しい声に、美月はホッとしうなずいた。

「でも店の前で私を下ろした後、電車で蓮人たちを迎えに行きました。子どもたちが色々買ってもらって大変らしくて。おじいちゃんおばあちゃん、みんな甘いんです」

とくに碧人の両親は初めての孫との年越しを楽しみにしていて、前回日葉里の旅館を後にする時には今回の宿泊を早速予約していたほどだ。

「美月さん、ちょっといいですか?」

「もちろん。どうかした?」

アルバイトの女の子の声に、美月は顔を向けた。

「これ、仕上がったんですけど、どうでしょう?」
「わあ、素敵。きれいに仕上がったのね」

カウンターの中でそっと差し出されたのは、今日の送別会で手渡す予定の二枚の色紙。

店の従業員やアルバイト、それに常連さんたちのメッセージがびっしりと書かれている。

きれいなシールやリボンで華やかにデコレートされた力作で、手渡されるふたりはきっと喜ぶはずだ。

「ご苦労様。試験とか実習とかで忙しかったのに、ありがとう」

とりまとめてくれたのは、現在二年生の女子。

年明けからはバイトリーダーとしてがんばってもらう予定だ。

「いえ、全然。でも、あと二年しかここで働けないのかと思うと、今から寂しいです」

「そうか……そうだよね」

目の前でがっくり肩を落とす姿に、美月はふと自分の姿を重ねた。

美月のここでの人気はあと一年半もない。

予定では再来年の四月には本社に戻る予定なのだ。

「……うっ」

一瞬、胃に鋭い痛みが走り、小さく声を漏らした。

「美月さん? 大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫。平気」

思わず胸を押さえた手を横に振り、笑ってみせる。

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