無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「とりあえずコーヒーをお願い」

どうでもいいとでもいうようにそう言うと、木島は店内のあちこちに置いている基地関連のグッズに気づいたのか、ぐっと眉を寄せた。その顔は相変わらず厳しく、苛立っているのがわかる。

「基地の隊員もここによく来るらしいわね」

「時々そうお聞きすることがあります。私服で来られるので気づきませんが」

「へえ」

木島はカウンターに頬杖をつき正面から美月を見据えた。

「あなた、最初からそれが狙いでここに来たの?」

「は? あの、どういうことですか?」

訳がわからず、美月は目を瞬かせた。

「ふんっ」

木島は小さく鼻を鳴らし腕を組むと、スツールの背に軽く身体を預けた。

「松島にいた時、桜井一尉は任務中心というより任務以外なにも興味がない毎日を送っていたはずなのよ。もちろん女性の影なんてなかったの」

「はい……?」

不意に出された碧人の名前に、美月は動きを止めた。

やはり碧人のことで美月を訪ねてきたようだ。

「それが、なに? 小松に赴任してあっという間に結婚なんて、おかしいわよ。あなた松島でも桜井一尉を追いかけていたけど、わざわざ転属先を調べてここまで来たの?」

「それは、違います。私はあのラストフライトの時に初めて松島に行って。あの、息子に一度くらいフライトを見せてあげたくて」

「なんなのあなた。その時から子どもを使って桜井一尉の気を引くつもりだったの? 信じられない」

「それも違うんです。私はあの日を最後に――」

「知ってるのよ。あなた、東京じゃ未婚のシングルマザーだから職場にいづらくてここに逃げてきたそうね。この間、たまたまあなたがここにいるのを見かけて調べたの」

美月の反論など聞き流し、木島は楽しげに言葉を続ける。

「調べたって、なにを?」
 
そう尋ねるものの、答えはわかっている。

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