無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「このカフェって藤谷商事が運営してるのよね。ちょうど藤崎商事の本社に知り合いがいて聞いてみたら、すぐに教えてくれたわよ。海外赴任直前に妊娠がわかって、赴任は辞退。おまけに未婚のまま出産。一躍時の人だったらしいじゃない」

「時の人……」

美月を傷つけたくてたまらないのだろう、木島は芝居じみた声で、大袈裟に話し続けている。

ただ、彼女の話はどれもその通りで反論できない。

「有坂?」

「大丈夫です。すみません」

背後にいる岡崎の心配そうな声に、美月は振り返りうなずいた。

気づけば店内のあちらこちらから物言いたげな視線が向けられている。

客たちも食事をしつつ耳をそばだてているのがわかる。

美月はバイトたちに「ごめんね」と視線で伝え、木島に向き合った。

「木島さん、そういうお話なら場所を変えて……よければ外でお聞き――」

「息子に父親をつくってあげたい気持ちはわかるけど、桜井一尉をターゲットにして犠牲にするのはやめてもらえないかしら」

いっそう大きくなった木島の声が店内いっぱいに響いた。

「犠牲って、そんなつもりはありません。碧人さんは私と蓮人を」

「碧人さんなんて軽々しく言わないでって、この間も言ったわよね」

「でも、私は」

木島の語気の強さに圧されて、美月は声を詰まらせた。

なにを言っても木島には信じるつもりがなさそうだ。

「息子の父親はどうしたの? まさか捨てられたの?」

木島の誤解は相変わらずで、美月は唇をかみしめた。

どうすれば蓮人が碧人の実の息子だと信じてもらえるのか、途方に暮れる。

「簡単に本社を追い出されるなんて、その程度の仕事しかしていなかったんでしょう? おまけにシングルマザーじゃ将来不安よね」

勝ち誇ったような笑顔で木島はスラスラと話し続ける。

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