無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
碧人が事情を説明してくれたとはいえ、彼女が納得してくれたのかどうか、正直今もまだわからない。

それでも佐々木たちの朗らかさが、膠着していた空気に風穴を開けたのは間違いない。

「全然いいのよ。だって面倒なことはさっさと片付けて、早く有坂さんの結婚をお祝いしたいもの。それよりまだ準備はできてないの?」

「あ、あの、私の結婚祝い? ってなんの話ですか?」

「なんの話って、ねえ?」

佐々木たちはきょとんとし、顔を見合わせる。

「だって、今日これから――」

「すみませんっ。閉店後に準備を始めますので、あちらでお待ちいただけますか?」

「とりあえずコーヒーでもお持ちしますね」

慌てたようにアルバイトたちが駆けつけてきて、佐々木たちを店の奥へと案内していく。

「え、どういうこと?」

慌ただしく動き始めた店内を見回し、美月は首をかしげる。

カウンターを見ると、気まずげに笑っている岡崎と目が合うものの、すぐに逸らされた。

続けて碧人を見ると、明らかに表情を変え、こちらも目を逸らされる。

「れん君も、なにか飲もうか。駅から走ってきたから喉が渇いたよな。岡崎さんすみません。リンゴジュースありますか」

まるで美月から逃げるように岡崎のもとに向かう碧人。どう考えてもなにかがおかしい。

それからしばらくの間、美月は訳がわからず首をひねり続けていた。

 


やがて閉店時刻を迎え、今年最後の営業が無事に終了した。

なにか普段と違う空気を感じつつ始まった送別会。

四年近くもの長い間働いてくれたバイトふたりは、花束やびっしりとメッセージが書かれた色紙を手に涙を流していた。

三月の国家試験に無事に合格するようにと常連さんたちからもお守りが手渡され、さらに涙の量が増えていた。

そして。

涙を流したのは、ふたりだけじゃなかった。

「ありがとう……ございます」

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