無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
今はそれが楽しくて仕方がないのだ。 

その楽しみを知った今はもう、赴任は考えられない。

「だけど俺や蓮人を気にしてあきらめるようなことはしてほしくないんだ」

「あきらめたわけじゃないですよ。やりたいことが変わっただけで、無理もしてません」

美月は碧人の中に未だ残っている罪悪感を気にかけながら、ハッキリと答えた。

バレリーナと海外赴任。

ふたつの美月の夢を自分が壊したと思って責任を感じている碧人。

今回再びイギリス赴任の話が持ち上がっていると知って、今回こそは美月の邪魔はしないと決意したようだ。

今の美月を見れば、赴任を希望していないことはわかるはずだが、これが最後のチャンスかも知れないと言って、何度も美月の本音を聞き出そうと一生懸命だ。

最近、碧人自身がいよいよアグレッサー部隊に配属されたことも大きいはずだ。

航空自衛隊最強のパイロット集団と呼ばれる精鋭部隊に選抜されたのだ、喜びも大きいに違いない。

そんな中で美月にもイギリス赴任の打診があったのだ。自分ひとりが夢を追いかけるのは申し訳ないと考えたのかもしれないが、それは気の回しすぎだ。

どこまでも美月の幸せを考えてくれる碧人の優しさには感謝しているが、今回ばかりは的が外れている。

今でもイギリス赴任を願っていたなら蓮人のことも周りに相談して頼らせてもらうことも考えるが、今の美月にそのつもりはゼロ。

碧人や蓮人と離れてまでイギリスに生きたいとは思わない。

「私、イギリス赴任よりもカフェ事業を盛り立てたいし、カフェ事業よりも碧人さんとれん君の方が大切なんですよ。結局、私はふたりと一緒にいられたらそれでいいんです。だからこれ以上心配しなくても大丈夫です」

「あ……あ、そうなんだな。いや、そうだよな。俺もそうだし」

美月の言葉に、碧人はようやく目が醒めたような表情を見せる。 

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